あおぞら銀行280億円の赤字
あおぞら銀が280億円の赤字に、米不動産リスク波及-株ストップ安
梅川崇- 今期業績を下方修正、純損益は15年ぶりの赤字に-追加引き当てなど
- 米地銀NYCBを直撃した商業用不動産の市況悪化、邦銀にも影響
あおぞら銀行は1日、今期(2024年3月期)の連結業績見通しを下方修正した。純損益は240億円の黒字から一転して280億円の赤字に陥る。米国オフィス向けの不動産融資で損失に備える追加の引当金を計上するほか、米金利の上昇を受けた外国債券の含み損を処理する。
第3四半期と期末の配当予想は無配とした。最終赤字は09年3月期以来、15年ぶりとなる。発表を受けてあおぞら銀の株価はストップ安(値幅制限いっぱいの下落)となる21%安の2557円まで下落。2011年3月以来の日中下落率を記録した。
米商業用不動産の市況悪化を巡っては、地銀持ち株会社のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が1月31日、引き当て強化を迫られ、23年10-12月(第4四半期)決算で予想外の赤字を発表。一部の現地銀行に深刻な影響を与えており、日本にも飛び火した形だ。
あおぞら銀の開示資料によると、米オフィス向けの不動産融資では市場の流動性が低く厳しい状況にあるとした上で、破綻懸念先について不安定な市場の影響を考慮したストレスをさらに加えた引き当てを実施すると説明。同行の谷川啓社長は11月、北米の不動産向け貸し出しについて追加の引当額は大きく膨らまないと話していたが、第3四半期に324億円の引当金を追加計上する結果となった。
同行の昨年12月末時点での米オフィス案件の融資残高は18億9300万ドル(約2780億円)で、貸し出し全体に占める割合は6.6%。損失に備える融資の引当率は9月末の9.1%から18.8%まで大幅に引き上げた。
米金利の上昇で評価損を抱えた外債などの有価証券は売却処理を加速させる。24年3月までに410億円の損失を計上する見込みだ。
松井証券の窪田朋一郎シニア・マーケット・アナリストは、あおぞら銀について「昨年の間に引き当ての処理が進み、最悪期は過ぎたのではないかという見方があった中、ふたを開けてみたら赤字転落でショックが走った」と分析。同行のように「米不動産にここまで注力してきた銀行はなく、メガバンクはリスクコントロールができている。銀行株が軒並み売られるということはないだろう」とみる。
海外不動産のリスクは金融庁が注視する分野の一つだ。金融機関のモニタリングを担当する屋敷利紀審議官は1月、ブルームバーグとのインタビューで、米欧の不動産市況悪化を踏まえ、不動産ノンリコースローンなどでは貸し出し案件ごとに検証していく方針を示していた。
あおぞら銀は4月1日付で大見秀人副社長が社長に昇格し、谷川社長が退任する人事も併せて公表した。同行の広報担当者によると、同日午後5時から決算に関する説明会と社長交代の記者会見を開く。
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