結論:長期投資なら「押し目を分散して買う」戦略が適し
ています
ホンダの2027年3月期第1四半期決算は、営業利益が四半期として過去最高となる好決
算でした。
ただし、今回の利益には円安効果や前年に計上したEV関連損失の反動も含まれています。
そのため、「純利益が2倍以上になったから株価も2倍になる」と考えるのは危険です。
2026年8月6日の株価1,635.5円は、配当利回り4.28%、PBR0.52倍という点では魅力的
です。一方、通期予想EPSに対するPERは約16倍で、利益基準では極端な割安株とは
いえません。
私なら次の方針を基本にします。
1,600円台で少額購入し、1,500円前後、1,400円台と下がるごとに買い増す
「3回程度の分散投資」が有効です。
ホンダの第1四半期決算はどれほど良かったのか
ホンダが公式に「過去最高」と説明しているのは、四半期の営業利益5,307億円です。
純利益も4,509億円と非常に高い水準ですが、「純利益の過去最高」とは分けて理解す
るのが正確です。
営業利益の中身も改善しています。
二輪事業:2,339億円
四輪事業:1,921億円
金融サービス事業:1,058億円
その他事業:11億円の赤字
特に二輪事業は営業利益率20.5%を記録し、営業利益と利益率の両方で四半期最高とな
りました。インドやブラジルなどで販売が伸びています。
四輪事業も、前年同期の296億円の赤字から1,921億円の黒字に転換し、営業利益率は5.0%
まで回復しました。ホンダ2027年3月期第1四半期決算資料
好決算をそのまま年間換算してはいけない理由
今回、最も注意したいのが「第1四半期の利益進捗率」です。
ホンダの通期予想は以下のとおりです。
第1四半期の純利益だけで、すでに通期予想を上回っています。
これは一見すると「さらなる上方修正が期待できる」と考えられます。しかし、会社は
今後、電動化戦略の見直しによる5,200億円の損失を見込んでいます。
つまり、4~6月期の好調な利益の多くが、そのまま最終利益として残るわけではありません。
通期では次の構造になっています。
EV関連損失を除く調整後営業利益:1兆1,700億円
EV戦略見直しに伴う損失:マイナス5,200億円
最終的な営業利益予想:6,500億円
「本業は好調だが、EV戦略修正の後始末が大きい」というのが現在のホンダです。
ホンダ株の5つの買い材料
1.二輪事業が強力な利益源🏍️
ホンダ最大の強みは、世界トップクラスの二輪事業です。
第1四半期の二輪販売は前年同期比10.1%増の566万3,000台。営業利益率20.5%は、
製造業として非常に高い水準です。
特にインド、ブラジル、東南アジアなどでは、二輪車が生活に欠かせない移動手段です。
自動車より購入価格が安いため、中間所得層の拡大を取り込めます。
四輪メーカーとしてだけでなく、「世界の二輪需要の成長株」として評価できる点がホンダ
の魅力です。
2.四輪事業が黒字転換🚗
四輪事業は前年同期の赤字から1,921億円の黒字へ回復しました。
北米販売の増加、為替の円安効果、前年のEV関連損失がなくなったことなどが寄与し
ています。
ただし、利益率5.0%は二輪事業と比べれば低く、今後は5%台を安定して維持できるか
が重要です。
3.配当利回り4%台💰
年間配当予想は1株70円です。
株価1,635.5円の場合、
70円÷1,635.5円×100=約4.28%
100株を約16万3,550円で購入すると、税引き前の年間配当金は7,000円です。
さらにホンダは、DOE(株主資本配当率)3%を目安に、安定的・継続的な配当を目指し
ています。利益が一時的に減少しても、配当を維持しやすい方針です。
4.PBR0.52倍は資産面で割安
BPSは約3,175円、株価は約1,636円なので、PBRは約0.52倍です。
株価が1株当たり純資産の半分程度しか評価されていません。EV投資、四輪の低収益性
、中国事業などへの不安が織り込まれているためです。
事業再編によって資本効率が改善すれば、PBRが0.7倍、0.8倍へ修正される余地があります。
5.EV一辺倒からHV重視への転換
EV市場の成長が想定より鈍化するなか、ホンダはハイブリッド車へ経営資源を振り向けています。
巨額損失の計上は痛手ですが、需要が弱いEVへ投資を続けるより、得意分野である
エンジン、ハイブリッド、二輪へ資源を集中する判断には合理性があります。
注意したい6つのリスク
1.円高になると利益が減りやすい
今回の通期上方修正は、為替前提を1ドル145円から155円へ変更したことが大きな
理由です。会社は為替効果だけで調整後営業利益を1,700億円引き上げています。
したがって、1ドル140円台まで円高が進めば、現在の上方修正分が縮小する可能性が
あります。
今回の最高益は、事業改善だけでなく円安の追い風も受けた利益です。
2.EV関連損失5,200億円
北米EVモデルの開発・投入中止などに伴い、今期は5,200億円の損失を見込んでいます。
取引先との協議や設備の処理方法によって、追加費用が発生する可能性も残ります。
3.通期PERは約16倍
PBR0.52倍だけを見ると非常に安く感じますが、会社予想EPSは約102円です。
1,635.5円÷102円=約16倍
自動車株としてPER16倍は、必ずしも大幅な割安水準ではありません。今期利益がEV損失
で押し下げられている特殊要因はあるものの、「PBRだけで割安と判断しない」ことが大切です。
4.配当性向が一時的に高い
年間配当70円に対して予想EPSは約102円なので、単純計算の配当性向は約69%です。
70円÷102円×100=約68.6%
今期は特殊損失で純利益が抑えられるため、一時的に高い配当性向となります。DOE方
式によって配当の安定性は期待できますが、今後の利益回復が遅れる場合は注意が必要です。
5.中国市場の苦戦
中国では現地EVメーカーとの競争が激しく、日系自動車メーカー全体が販売面で苦
戦しています。
北米だけでなく、中国事業の縮小や再編がどこまで進むかも中長期的な課題です。
6.関税・熊本地震・品質関連費用
米国の関税政策、原材料価格、リコールなどの品質関連費用に加え、熊本地震による国
内工場の生産休止も今後の業績に影響する可能性があります。
株価水準別の投資戦略
年間配当70円が維持される前提では、株価ごとの配当利回りは次のようになります。
年初来高値は1,722円です。現在の1,635.5円は高値まで約5%しかなく、決算直後に全額
を投じる場面ではないと考えます。
私ならこのように分散購入します
仮に300株を最終目標とする場合は、次のように分けます。
1,600~1,650円:100株
1,480~1,550円:100株
1,350~1,450円:100株
現在価格でまず100株を保有すれば、上昇した場合に完全な買い逃しを避けられます。一方、
円高や市場全体の下落で株価が下がった場合には、取得単価を引き下げられます。
一度に300株を買うより、決算ごとに四輪利益率やEV損失を確認しながら買う方が安全です。
新NISAで購入する場合も、高配当株だからとホンダ1社に集中せず、自動車株をポートフォ
リオ全体の5~10%程度に抑えるのが無難です。
今後の決算で確認したいポイント
次回以降は、売上や純利益だけでなく以下を確認してください。
四輪事業の営業利益率が5%以上を維持できるか
二輪事業の利益率20%前後が続くか
EV関連損失が5,200億円から拡大しないか
為替前提155円に対して実際のドル円がどう動くか
年間配当70円が維持されるか
中国販売の減少が止まるか
調整後営業利益1兆1,700億円を達成できるか
自社株買いや政策保有株の売却が進むか
総合評価
ホンダ株は、短期間で大きな値上がりを狙う成長株というより、4%台の配当を受け取り
ながら、四輪事業の収益回復とEV損失の解消を待つ「高配当・資産割安株」と考えるの
が適切です。
今回の決算は明確に好材料ですが、第1四半期の利益を単純に4倍して評価することはで
ません。現在の1,600円台では少額にとどめ、円高や全体相場の調整で1,500円前後まで下が
れば買い増す戦略が、長期投資には向いていると判断します。
※株価と指標は2026年8月6日終値付近を基準としています。投資判断はご自身の資金計
画とリスク許容度に合わせてください。

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